ニコンSP

 いわずとしれた日本光学製レンジファインダーカメラの最高級機で1957年9月の発売。当時の価格¥98000は新卒サラリーマンの年収ほどであった。
28oから135oまでをカバーしたユニバーサルレンジファインダーを搭載。ライカに追いつき追い越すことを目標に開発されたカメラで、当時の日本光学の精密加工技術の賜物。ファインダーやシャッター、各部の作動の精度と耐久性は非常に高く、また滑らかに調整されており、一度手にしただけでいかにこのカメラが高品質で手間ひまかけて作られたものであるのかがひしひしと伝わってくる力作。当時、センセーショナルを巻き起こし、プロカメラマンを中心に愛用されるようになった。
 日本光学のメイン商品として君臨するはずだったが、時代は一眼レフに移行しつつあった。1959年に発売されたニコンFにその座を譲った。同時に堅牢性もニコンFに引き継がれたのである。そしてニコンFはその汎用性の高いシステムとともに故障を知らない”止まらないカメラ”として世界各国の報道写真界を席巻したのは周知の通り。
 複雑で精密なメカを擁するニコンSPは余りにも生産性が悪いためわずかな期間でに生産中止となったとされている。総生産台数は22000台あまり。
 2000年にニコンS3が復刻されたが、SPは製造が難しくて当時の品質レベルを再現できず、したとしてもコストがかかりすぎ、復刻できなかったそうである。でも私としては一日も早い復刻をお祈りしています。

1.全面 大きく目立つユニバーサルファインダーが外観上の特徴。 一度見たら忘れられないデザインですね。Nikonのロゴの上にはピント調節ダイヤルがありますがこの個体では非常にスムーズな操作感覚です。またアソビも少ないです。復刻S3ではときどき硬くなることがありますが、当時は熟練した職人さんがそれこそ体で覚えたカンと技でラッピング(ギアの研磨)をしていたのでしょう。感慨深いものがあります。装着のレンズはニッコール50mmF1.4 このレンズはゾナータイプのレンズ構成。 絞り開放時の収差(特にコマ収差)は多いが、それを意図してソフトな印象の作画をすることもできます。周辺減光も開放時では目立ちます。


2.背面。ユニバーサルファインダーは当時めおとファインダーなどと呼ばれた。


3.取り外し式の裏ブタ。蝶番式にくらべると使いにくい。モータードライブ用連結軸が見える。若い製造番号のこのカメラはシャッターは布幕。上品な美しい音色で動作するシャッターです。


4.軍艦部 このカメラで初めてシャッターダイヤルが一軸不回転となった。シャッターボタンは後ろへオフセットされているので使いにくい。またこれに慣れてしまうと他のカメラが使いにくくなる。巻き戻しノブの外周にファインダーセレクター。


5.ファインダー内視野
 一番外側の枠が50mmレンズ用です。続いて85o、105mm 一番内側が135o ぱっと見たときの印象はやや緑がかっており、暗い印象ですが、像は非常にシャープです。等倍なので両目をフレーミングするときはまるで視野枠が風景に浮かんでいるように見えます。 カラフルな光像枠は巻き戻しノブの外周リングのセレクターを操作するとつぎつぎに現れる仕掛けになっています。虚像式なので、枠で被写体が完全に隠れてしまうことはありません。実に巧妙なからくりといえるでしょう。
 50mm状態では外側の枠のみ表示され、今見えているのは135oに設定している状態での視野です。
パララックス(ファインダーの視野と実際の写野の差)は自動補正され、レンズのヘリコイドをまわすと光像枠が少しづつ動くさまは見事。高精度なつくりで実際の視野との視差も非常に少なく優れたファインダーと評価されています。


広角側のファインダー 小さいのですが、28oレンズでもその視野を一目で確認できます。ただし、パララック自動補正はありません。また距離計はありませんので隣のを使用します。
黒枠が35mmの視野を示しており、破線は一番近づいたときのパララックスを表示しています。たる型の歪曲収差が目立ちます。


6.元箱と説明書


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